銀行融資の事業計画書には何を書けばよいでしょうか。私の経験からは以下の項目があれば良いと思います。
- 経営者の自己紹介(経営者の経歴、経験や資格)
- 業績(決算書、具体的な業績など)
- 今回のプロジェクトの紹介(アピールポイント、課題とリスク、初期投資額と資金計画、プロジェクト期間における収支計画)
銀行等の金融機関は非常に階層化された組織で、融資審査を担当者が1人で決定できることはまずないと考えてください。そのため、金融機関の担当者は必ず書面で上司に稟議する必要があります。あなたが典型的な疑問点に答える資料を提出すれば、金融機関担当者が上司に間違った説明をするリスクを排除できますし、担当者は手間が削減できて喜んでくれます。
経営者の自己紹介
経営者に実力があるか、誠実か、といった点が厳しく審査されます。そこで、これらの問にYESと答え、その根拠を提示します。不動産賃貸業の融資はほとんどの場合は不動産を担保にとって債権を保全します。しかし、だからといって経営者の情報が問われないわけではありません。
経歴
経営者の実力を示すためには、第一に過去の経歴を記載し、賃貸業で業績を上げてきた(または今後業績を上げられる)こと、真面目に社会人経験をしてきた人間であること、等を示します。
経験や資格等
このほか、不動産経営に資する経験や資格等を記載します。例えば、不動産、建築、インテリア、会計・ファイナンス等に関する資格を保有している人は、真面目に経営を考えていることを示すアピールポイントになります。
業績
賃貸業としての業績はより重要です。いくらきれいな経歴の経営者でも、経営が失敗していれば信頼度は大きく下がるでしょう。逆に、学歴や職歴がぱっとしなくても、実際の経営で成果を出していれば、いくらでもカバーできます。
決算書
銀行等は業界の文化として、決算書を最も重視します。無理な節税はせず、できる限り健全な利益を出すようにしましょう。
具体的な業績
賃貸業に関してより具体的な業績を記載します。すでに物件を保有している場合にはその利益や収支が健全であることを示します。さらに空室がある物件を再生した経験がアル方は、その過程を具体的に示すことで、実力をアピールすることができます。
今回のプロジェクトの紹介
アピールポイント
プロジェクトの最大のアピールポイントを主張しましょう。例えば以下のようなパターンがあります。
- 利回りが高い
- 人気の立地や間取りで安定稼働が見込める
- 積算価格が高くてすぐ転売して利益がでる
- 土地の容積率が余っていて建て替えると価値が高まる
立地の特徴
近隣の買い物施設・教育施設・工業団地などについて説明します。これを調べているうちに、「この地域にはスーパーがない!」などというネガティブ情報に気づくことがあります。基本的に、近隣にスーパーや保育園、小中学校がない場所(過疎)は人が住むのに適しませんから、見送るようにしましょう。
想定される入居者のペルソナと賃料水準
どのような入居者を想定するのかを説明します。◯◯工業団地に通勤する人・〇〇大学に通学する学生など、具体的にイメージしましょう。
賃料水準はレントロールに記載がありますが、これを真に受けないでください。十年以上前に高い賃料で入居した入居者が混じっていることもありますし、特に新築物件や全室空室の物件では売主が不自然に高い賃料想定をしている場合があります。必ずSuumoやHome’sなどを利用して同条件の物件と比較し、検証するようにしましょう。
課題・リスクとその克服方法
課題やリスクがあれば記載し、どのように克服するかのシナリオを提示しましょう。具体的には、以下のようなものが考えられます。
- 空室が多い
- 間取りや設備が古い
- 建物が傷んでいて修繕が必要
- 入居者が一社のみで一斉退去リスクがある
克服の方法は、例えば、以下のようなものがあります。
- 空室は前の所有者が高すぎる賃料水準で募集していたためで、自分は市場価格より安く貸す
- 設備の更新で競争力を回復させる
- 取得と同時に修繕と外壁塗装を実施して、耐久性を高める
- 他の物件とのポートフォリオで一斉退去があっても耐えられ、またすぐ埋められる確信がある
初期投資額と資金計画
初期投資の各費目および総額を示し、それをどのような形で賄うかを示します。「総投資額はいくらですか」と聞かれて答えられないようでは経営者として失格です。
具体的には、物件取得価格、固定資産税等清算金、契約書に貼付する印紙代、仲介手数料、金融機関の融資手数料、登記に係る登録免許税および司法書士報酬(所有権移転登記および抵当権設定登記)、損害保険料、不動産取得税などがあります。
プロジェクト期間における収支計画
毎月の返済をしていくわけですから、収支がまわらなければ事業が継続できず、倒産してしまいます。安定的に返済できることを示しましょう。
具体的な項目には、賃料収入、元本及び利息の返済額、管理委託費、清掃費、光熱水費、損害保険料(地震保険料を含む)、固定資産税等があります。