中古建物を売買する際、一定の確率で取引後に瑕疵が発見され、もめごとが発生する場合があります。

もめごとが起きる背景には情報の非対称性がある

中古建物の状態は、売主にとっては非常に把握しやすいものです。通常は、長期間にわたり自ら建物を維持管理をしてきた経緯がありますから、建物の不具合についてはよく理解しているものです。一方の買主は、内見をするにしても、ごく短時間の調査に基づいて判断をせねばなりません。つまり、必然的に情報の非対称性があるのです。

ただし、売主もすべてを把握しているわけではありません。「床下にシロアリがいる事実を知らなかった」という場合だってあります。ですから、知っている限りの状況を文書にして渡す「物件状況告知書」が作成され、買主に手渡されます。

この「物件状況告知書」が誠実に作成されない場合に何が起きるでしょうか。

何とか売り抜けたい売主は情報を隠蔽する

売主の立場にたつと、建物の問題点をできる限り少なく告知したい欲求があります。なぜなら、売却前に修繕を要求されたり、値引きを要求されたりするからです。問題のある建物を保有していればいるほど、建物の瑕疵を隠したくなります。

このため、建物の問題を認識しても、「知らなかったことにして」告知せずに売り抜けるという行為が行われてしまいます。

売主の告知を信用せざるを得ない買主は被害を受けやすい

現代日本の不動産取引慣行においては、買主は売主の告知を真実であると信じて取引をします。このため、売主の告知が事実と異なっていた場合には、買主は被害を被ることになります。買主から見れば、詐欺も同然です。

売主にも一定の調査を行う責任はあると思われますが、誠実な告知を行わない買主の「粗探し」をする責任まで負わねばならないのでしょうか。

判例では

こうした利害を裁判所はどのように調整しているのでしょうか。

東京地裁で平成27年10月14日に出された判例では、詐欺もしくは告知義務違反の不法行為による損害賠償責任を問う原告の訴えが一部認められました。詐欺の不法行為責任はよほど明確な物証がないと認定が難しいようです。一方の告知義務違反については、説得力のある証拠を提示すれば認められる可能性が期待できるようです。